食事・補食

体を大きくしたい少年野球の子へ
親が見直せる食事・睡眠・休養

「もっと体を大きくしたい」——少年野球をしているお子さんから、そんな言葉を聞いたことはありませんか。同じ学年の子と並んだときの差が気になって、親のほうが先に焦ってしまうこともあると思います。この記事では、そんなときに家庭で見直せることを、食事・睡眠・休養という3つの土台に分けて整理しました。特別な方法や近道を紹介する記事ではありません。公的機関が示している目安をもとに、いま何ができて、何は焦らなくていいのかを、いっしょに確かめていければと思います。

はじめにお伝えしたいこと

この記事は、「これをすれば体が大きくなる」という方法をお伝えするものではありません。身長や体格の伸び方には大きな個人差があり、何かを食べたり飲んだりすれば思いどおりになる、というものではないからです。

ここで扱うのは、あくまで「毎日の生活で土台を整える」という話です。数値は公的機関が示している目安を引用していますが、健康な集団に向けたものであって、お子さん一人ひとりに必要な量を示すものではありません。心配なことがあれば、かかりつけ医や学校医にご相談ください。

「大きくなりたい」と言われたら、まず確認したいこと

お子さんが「体を大きくしたい」と言うとき、その気持ちの中身はいくつかに分かれます。まずはそこを聞いてあげるところから始めると、家庭でできることが見えやすくなります。

どれであっても、まず伝えてあげたいのは「小さいことが野球の下手さを意味するわけではない」ということです。守備範囲の広さ、バットの出し方、走塁の判断、声のかけ方——体格と関係なく伸ばせる部分は、野球にはたくさんあります。体格の話を、そのままプレーの評価に直結させないであげてください。

そのうえで、家庭で見直せることを整理していきます。「頑張って食べなさい」と迫るのではなく、親のほうが環境を整える——この記事はそういう方向で読んでいただけたらと思います。

「たくさん食べろ」は逆効果になることも

食が細い子に無理やり量を食べさせようとすると、食事の時間そのものが苦しくなってしまうことがあります。量を増やしたいときは「1回の量」ではなく「食べる回数」を増やすほうが、子どもにとってはずっとラクです。この考え方は、あとの章でくわしく触れます。

体づくりの土台は3つ——魔法の方法はありません

最初に、この記事全体の見取り図をお伝えします。成長期の体づくりを支える土台は、次の3つに整理できます。

土台親が見るポイントこの記事で扱う章
食事練習量に対してエネルギーが足りているか/栄養がかたよっていないか③④
睡眠年齢の目安に対して、眠れている時間が足りているか⑤
休養練習が続きすぎていないか/休む日があるか⑥

この3つは、どれか1つを頑張れば残りをカバーできる、というものではありません。むしろいちばん足りていないところが、全体の足を引っぱると考えたほうが実用的です。食事だけ気にしていても、睡眠が5〜6時間しかとれていなければ土台は整いませんし、逆もまた同じです。

そして大事な前提として、この3つをすべて完璧に整えても、身長や体格が思ったとおりになるとは限りません。発育には持って生まれた要素や、伸びる時期のちがいが大きく関わるからです(このことは⑦でくわしくお話しします)。それでも土台を整える意味があるのは、練習を続ける体力を支えたり、ケガをしにくい状態に近づけたりと、いまの野球生活そのものを支えてくれるからです。

食事① まず「足りているか」を見る

体づくりの話になると、つい「何を食べるか」から考えがちですが、少年野球をしている子の場合、先に確認したいのは「そもそも量が足りているか」のほうです。

成長期は、練習で使う分+体が育つ分が必要になる

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、子どもの1日に必要とされるエネルギーを、体を維持するための分と体を動かす分に加えて、体が育っていく分(エネルギー蓄積量)も含めて見積もっています。つまり成長期は、大人と同じ考え方では足りない、ということです。

下の表は、その推定エネルギー必要量です。注目してほしいのは横方向の差——同じ年齢・同じ性別でも、体を動かす量によって数字が変わるところです。

年齢活動レベル「ふつう」活動レベル「高い」差
8〜9歳 男子1,850kcal/日2,100kcal/日+250kcal
8〜9歳 女子1,700kcal/日1,900kcal/日+200kcal
10〜11歳 男子2,250kcal/日2,500kcal/日+250kcal
10〜11歳 女子2,100kcal/日2,350kcal/日+250kcal
12〜14歳 男子2,600kcal/日2,900kcal/日+300kcal
12〜14歳 女子2,400kcal/日2,700kcal/日+300kcal

※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書より。健康な集団の目安であり、お子さん一人ひとりに必要な量を示すものではありません。

週末に半日〜1日練習があるチームなら、その日は活動レベルが上がります。ふだんと同じ食事量では、練習の日だけ足りなくなるということが起こりえます。「たくさん食べているように見えるのに体重が増えない」という場合、量そのものが追いついていない可能性も考えてみてください。

足りないと感じたら、まず「回数」を増やす

1回の食事で食べられる量には、子どもなりの限界があります。そこで役に立つのが1日3食+補食という考え方です。朝・昼・晩の食事はそのままに、練習の前後などに軽く食べる機会を足していきます。

何をどのタイミングで持たせるかは、補食のタイミング別ガイドにくわしくまとめています。試合の日の食べ方については、試合当日の食事スケジュールもあわせて読んでみてください。

補食で夕食が入らなくなったら本末転倒

補食はあくまで「食事の合間を埋めるもの」です。補食でおなかいっぱいになって夕食が入らない、という状態になっていたら、量やタイミングを見直しましょう。土台はあくまで3度の食事です。

食事② 何を、どうそろえるか

量が足りているか確認したら、次は中身です。ここでも特別なものは要りません。いつもの食卓に、そろっていないものを1つ足す——それだけで十分です。

そろえたい5つのグループ

難しく考えず、次の5つが1日のうちにひととおり登場しているかを見てみてください。

グループ食品の例体の中での役割
主食ごはん・パン・めん・いも体を動かすエネルギーのもとになる
主菜肉・魚・卵・大豆製品筋肉や内臓など、体をつくる材料(たんぱく質)になる
副菜野菜・きのこ・海藻ビタミンやミネラル、食物繊維を補う
乳製品牛乳・ヨーグルト・チーズ骨や歯をつくる材料(カルシウム)などを含む
果物バナナ・みかん・りんごなどビタミンや、すぐエネルギーになる糖質を含む

ここで気をつけたいのが、「これさえ食べれば大丈夫」という食品はないということです。牛乳もたんぱく質も、大切な役割を持ってはいますが、それだけを増やしても他が抜けていれば土台は整いません。「万能な1つ」を探すより、並んでいる皿の種類を1つ増やすほうが確実です。

たんぱく質は「材料」——目安量を知っておく

体づくりの話でよく出てくるたんぱく質は、筋肉や内臓、皮膚など、体そのものをつくる材料になる栄養素です。食事摂取基準(2025年版)が示している1日の推奨量は次のとおりです。

年齢男子(推奨量)女子(推奨量)だいたいの目安
6〜7歳30g/日30g/日卵1個で約6g、牛乳コップ1杯(200mL)で約7g、鮭1切れで約15〜20g、納豆1パックで約7gが一般的な目安です
8〜9歳40g/日40g/日
10〜11歳45g/日50g/日
12〜14歳60g/日55g/日

※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書より。健康な集団の目安です。

数字だけ見ると多く感じるかもしれませんが、3食に主菜を1品ずつ、そこに牛乳や卵が加われば、届かない量ではありません。逆に言えば、朝食を抜いたり、パンだけで済ませたりする日が続くと足りなくなりやすい、ということでもあります。

なお、たんぱく質は「多くとればとるほどよい」というものではありません。食事摂取基準では、たんぱく質から得るエネルギーの割合の目標量も示されていて、多くの年代で13〜20%という範囲が目安とされています。足りないのも困りますが、そればかりに偏るのも違う——バランスの話に戻ってくるわけです。プロテインについての考え方は、少年野球にプロテインは必要?で単独に取り上げています。

朝ごはんは、いちばん見直しやすいところ

1日3回の食事のうち、いちばん簡素になりやすいのが朝食です。「ごはんと味噌汁だけ」「食パン1枚だけ」になっていたら、卵を1つ、あるいは牛乳を1杯足すだけでも中身が変わります。忙しい朝に品数を増やすのは大変なので、ゆで卵をまとめて作っておく・ヨーグルトを常備しておくなど、手間のかからない形で用意しておくのが続けるコツです。

睡眠 小学生は9〜12時間が目安

食事に比べて見落とされがちなのが睡眠です。しかしここは、公的な目安がはっきり示されている数少ない項目でもあります。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、こどもについて次のように示されています。

年代参考にしたい睡眠時間
1〜2歳児11〜14時間
3〜5歳児10〜13時間
小学生9〜12時間
中学・高校生8〜10時間

※厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」より。あわせて同ガイドでは、朝は太陽の光を浴びて朝食をしっかりとり、日中は運動をして、夜更かしはほどほどに、という点も挙げられています。

小学生で9〜12時間。この数字を見て「うちは足りていないかも」と感じた方は少なくないのではないでしょうか。厚生労働省の情報でも、日本のこどもの睡眠時間は平均すると推奨時間を下回るか、下限のあたりにあると指摘されています。

たとえば朝6時30分に起きる子であれば、9時間眠るには21時30分には寝ている必要があります。練習から帰って、夕食、お風呂、宿題……と考えると、なかなか簡単ではありません。だからこそ、睡眠は「気をつける」ものではなく「逆算して設計する」ものだと考えたほうが現実的です。

家庭でできる、逆算のしかた

まず1週間、書き出してみる

「足りているかどうか」は感覚ではわかりにくいものです。1週間だけ、寝た時刻と起きた時刻をメモしてみてください。厚生労働省も同じ趣旨の記録シートを公開しています。書き出すと、どの曜日が崩れているのかがはっきり見えてきます。直すのはそのあとで大丈夫です。

練習しすぎていないか——休む日をつくる

3つめの土台が休養です。少年野球では、平日の練習に加えて土日も一日中グラウンド、さらに他のチームや塾も……という子が珍しくありません。ここで確認したいのは、「休む日がカレンダーに入っているか」という一点です。

公的なガイドラインが示している目安

文部科学省・スポーツ庁が示している部活動のガイドラインでは、活動時間と休養日について次のような基準が挙げられています。

これは中学校の部活動や地域クラブ活動を対象にしたもので、小学生の少年野球チームにそのまま適用されるルールではありません。ただし同ガイドラインは、過度な練習がスポーツ障害のリスクを高め、必ずしも体力や技術の向上につながらないという考え方にもとづいて作られています。この前提は、小学生にもそのまま当てはまる話です。

あわせて同ガイドラインでは、これらの目安が「成長期にある生徒が、学校内外の活動、食事、休養及び睡眠等のバランスのとれた生活を送ることができるよう」設定されたものだとも説明されています。練習・食事・睡眠は別々の話ではなく、1日24時間の取り合いだということです。練習時間が延びれば、そのぶん食事や睡眠の時間が削られます。

「休ませる」は、サボることではありません

子どもも保護者も、休むことに引け目を感じてしまうことがあります。しかし、体をつくり直す時間がないまま練習を重ねても、疲れが積み重なるばかりです。とくに投げる動作は、成長期の肘や肩に負担がかかりやすいことが知られています。痛みが出たときにどうするか、投球数と休養をどう考えるかについては、少年野球のケガ予防|野球肘・野球肩とストレッチでくわしくまとめているので、あわせて読んでみてください。

こんなサインが出ていたら、休養を優先して

練習に行きたがらない、朝起きられない、食欲が落ちている、いつもより不機嫌・元気がない、痛みを口にする——こうした様子が続くときは、練習量を見直すサインかもしれません。体の痛みがあるときは、我慢させずに整形外科などの医療機関にご相談ください。

体格には「個人差」と「タイミング」があります

ここまで生活を整える話をしてきましたが、この章がいちばんお伝えしたいところかもしれません。

身長や体格の伸び方には、大きな個人差があります。そして、伸びる時期そのものが一人ひとり違います。早い時期にぐんと伸びる子もいれば、中学生になってから伸びる子もいます。小学生の時点で並んだときの差は、「いまどの時期にいるか」の差であることが少なくありません。

データにもはっきり表れています

文部科学省の学校保健統計(令和6年度)から、年齢別の平均身長を並べてみます。

年齢男子の平均身長女子の平均身長
8歳128.5cm127.7cm
9歳134.0cm134.1cm
10歳139.7cm141.1cm
11歳146.0cm147.8cm
12歳154.0cm152.3cm
13歳161.1cm155.0cm

※文部科学省「令和6年度学校保健統計(確定値)」より。集団の平均値であり、個々の子どもの成長を示すものではありません。

10歳・11歳のところを見てください。平均でみると、この時期は女子のほうが背が高いのです。そして12歳になると男子が上回ります。同じ小学校の同じ学年の中で、こうした入れ替わりが起きているということは、体格の差が「その時点の順位」でしかないことをよく表しています。

男女の間でこれだけ時期がずれるのですから、同じ性別の子どもどうしでも、伸びる時期が数年ちがっていて何の不思議もありません。いま小さい子が、そのまま小さいままとは限らないのです。

比べる相手は「他の子」ではなく「去年のわが子」

チームの中で見比べると、どうしても不安になります。でも見るべきは、お子さん自身が去年からどれだけ伸びたかのほうです。母子健康手帳や、学校で毎年測る身長・体重の記録が手元にあるはずなので、そこを線でつないでみてください。

そして、体格のことを子どもの前で心配してみせるのは、できるだけ控えたいところです。親が気にしていると伝わるほど、子どもも自分の体を「足りないもの」として見るようになってしまいます。

小さいことは、野球では不利なだけではありません

体が小さい時期には、小さいなりの武器が育つことがあります。守備の細かい動き、バットコントロール、盗塁のスタート、バント、状況を読む力——いずれも体格に頼らない部分です。体が大きくなってから、そこで身につけたものが土台になることもあります。いまの体格でできることを伸ばしておくのは、決して「その場しのぎ」ではありません。

サプリメントはどう位置づける?

「食事だけでは追いつかないのでは」と感じたとき、サプリメントが気になる方もいると思います。ここでは位置づけだけ、短くお伝えします。

サプリメントは薬ではなく食品です。あくまで食事が土台で、そこで足りない分を補う目的で使うものという位置づけになります。飲めば体格やプレーが変わることを約束するものではありませんし、そのように説明している情報があれば、いったん立ち止まって考えたいところです。

もし検討するとしても、順番としては①3度の食事 → ②補食 → ③それでも気になるなら専門家に相談したうえでとなります。選ぶときの物差しや、大人用との違い、複数を併用するときの注意点などは、少年野球にサプリメントは必要?親が最初に考えたいことに整理してあります。関心のある方はそちらをご覧ください。

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まとめ

「体を大きくしたい」という言葉に、親としてできることをまとめます。

この5つに、特別なものは1つも入っていません。地味で、当たり前で、続けるのがいちばん難しいことばかりです。それでも、家庭でできることの中心はここにあります。

そして最後にもう一度。体格は、その子の価値でも、野球の実力でもありません。いまの体で楽しく野球ができていること、それを支える生活が整っていること——親が見ていてあげられるのは、まずそこだと思います。

ご注意ください

※発育には大きな個人差があります。この記事は公的機関が示している一般的な目安を整理したもので、特定の方法や製品の効果を保証するものではありません。身長・体重の伸び方、食事の量、疲れ方などで気になることがある場合は、かかりつけ医や学校医、管理栄養士にご相談ください。持病・アレルギー・服薬がある場合はとくに、自己判断で食事内容を大きく変える前に専門家にご確認ください。

参考にした公的機関の情報

まずは「食事の回数」から見直してみる

量が足りないと感じたときに、いちばん取り入れやすいのが補食です。何をいつ持たせるかを確認してみてください。

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